最近は学校の授業で、なんらか動画を作って提出する、という課題が出されることも増えてきているようですね。
私の時代はそもそも動画を作るというのは限られたプロやセミプロが行うもので、映像系の専門学校にでも行かない限りはなじみの薄いものでした。
しかし、今は動画を作るというのはそれほど珍しいスキルではなくなってきており、自己表現や仕事の一環として動画編集くらい出来て当たり前、という時代もすぐそこまで来ているのかもしれません。
ところで、動画などには、既存の音楽を付けることも多いと思います。Youtubeなどに投稿する動画に音楽を付ける際は、いろいろ注意すべきことがある、というのは、以下記事でも紹介しています。
学校の課題でも、同様のことを気を付ける必要があるのでしょうか?
まさかとは思いますが、生徒の知らない間に、学校や先生が権利者に許可を取ってくれているのでしょうか?
この記事では、
・学校の授業で既存の楽曲を利用しようと思っている方
・楽曲を使うような課題を出された学生の方
に向けて、楽曲を利用する上で注意すべきことについて調べた内容をお伝えしたいと思います。
2021年度から、補償金制度が本格導入される等の変更があり、今まさに動きがある分野です。
※以下は本記事の配信時点の調査情報です。以後情報が変わる可能性がありますこと、ご了承ください。
2021/2/14 修正
令和元年以前はメール提出も本来NG・・・という事例を出しておりましたが、
特に送信先が教師のみなど、特定少数へ向けたメールによる課題の送信は、そもそも”公衆”送信にあたりませんので、記事中の事例を修正いたしました。ご指摘下さった方、ありがとうございました!
学校の授業は例外!権利制限規定(教育機関における複製等)について
実は、学校の授業の一環として著作物を利用する場合は、例外的に権利者の許可を取らなくても良い場合があるのです。
ほかにも、家庭内で鑑賞する目的のために著作物をコピーしたりする等、例外的に権利者の許可を取らなくても良い場合があります。このように例外的に権利者の許可を取らなくても良いケースを総称して、「権利制限規定」と言います。
授業目的に著作物を利用する場合は、この「権利制限規定」が適用され、著作物を権利者の許可を取らなくても利用できることがあるのですが、様々な想定がされており、制限規定に当てはまる場合と、そうでない場合がケース別に細かく存在します。
それら1つ1つを書いていると大変長くなってしまうので、今回は、「都合よく解釈してしまって、知らずに権利侵害をしてしまいそうだな」というケースをピックアップして紹介したいと思います。
企業の研修やセミナー、学習塾等、”営利目的”での利用は対象外!
社内研修用の動画で、有名アーティストの曲をBGMにしたいんだけど、教育が目的だから、許可はとらなくていいよね?
いや、社内研修の場合は営利目的だから、許可は必要ですね。
許可を取らなくてよいのは、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専門学校だったり、公民館や博物館、図書館などの公的機関です。
一方、学習塾やカルチャークラブ、企業の研修やセミナー等は、”営利目的の利用”とみなされ、許可を取らなくて良いという、例外には当たないんですね。
なお、私立の学校などは、営利目的じゃないの?と思われるかもしれませんが、こちらは営利目的とはみなされず、許可を取らなくて良い仲間に入ります。複雑ですね。
ネットを介した受け渡し、映像授業などもOKとなったが、補償金が必要!
ネット経由での課題の提出はダメだって聞いたんで、USBメモリにコピーして、手渡し提出してきます。面倒だけど。
ちょっと古い情報ですね。今はクラウドストレージ経由で提出でもOKになりました。
さて、動画を作る課題が出されたとして、動画にBGMを付ける製作の過程で、コピー(複製)が入ります。先生に提出するときには、さらにその動画をコピーして渡すことになるでしょう。
コピーするところまでは、権利者の許可なく行っても、制限規定の範囲内です。
その次は「提出」や「発表」をしなければならないケースがほとんどでしょう。
ここが注意すべき点です。
一昔前は、大学などでは”CDやUSBメモリーにコピーして提出”などのように、提出経路としてネットを介さない、というケースが多くみられましたが、
今どきは”GoogleDrive等のクラウドストレージ経由で提出”などは当たり前で、”ZoomなどWebMTGソフトでプレゼン発表”というような、ネットを通して提出したり、発表したりするケースも増えてきたのではないでしょうか。
実は、令和元年以前は、インターネット経由等の「公衆送信」に当たるような行為は、学校の授業目的であったとしても、権利者に無許可での利用はNGだったんですね。
とはいえ、これはあまりにも時代の実態とかけ離れてしまっており、もはや単に不便なだけでは・・・という状態ですよね。
令和2年からは、インターネット経由での著作物を含む課題の成果を提出したり、逆に課題用の資料を送ったりすることが、(ようやく?)OKになりました。
さらに、授業をリアルタイムで配信したり(*1)、授業の様子をアーカイブ配信したり、という事も、権利者に許可を取らなくてもできるようになりました。
ただし・・・これら「公衆送信」の場合は、生徒一人につき、決められた額の補償金を払う必要があります。(生徒一人あたりの額面は教育機関によって異なります)
令和2年度に限り、補償金を無料にする、という特例措置がとられましたが、令和3年度からは補償金を教育機関側が支払っていく必要があるのです。
取りまとめを行うのは、SARTRASという組織で、この組織が教育機関からの徴収、権利者への分配を行います。
私見ですが、徴収や分配、かなり大変そうですよね。
特に、分配のところは、どの著作物がどの程度分配されたかというのが分かれば、納得のいく分配ができると思うのですが、それを行おうとすると、教育機関側が細かく記録を付けなければならないわけで・・・
現在進行形の状況なので、どのような形に落ち着いていくのか、目が離せません。
(*1)授業のリアルタイム配信は、令和元年以前も、教室に生徒が入っている状態で、それを別のところにいる生徒に配信、というケースであれば、無許可での利用がOKでした。
学校の課題だからと言って、授業に関係のない人に渡したらダメ!
卒業した先輩に動画編集に詳しい人がいたから、動画製作の課題のプロジェクトファイルを送って、アドバイスを貰おうかな~
残念ながら・・・授業の関係者以外に、コピーを送ったりしたらダメですよ。
権利者への利用許可が不要となるのは、あくまで授業などを目的とした例外措置なので、部外者が入る場合は適用外になります。
アドバイスを貰う目的であっても、直接授業に関係のない人にコピーを渡したり、WebMTGなどで内容を見てもらうような行為はやめておいたほうが良いでしょう。
例えば、動画についているBGMが他人の著作物だが、映像は自分が作ったもの、という事であれば、BGMを削除した状態で見てもらう、という対策を取るなら問題はないと思います。
Youtubeなどにアップするなど、不特定多数に見えてしまうようなところに置いて、広く意見を募る・・・ような、アグレッシブで実践的な授業課題も、世の中にはあるかもしれませんが、課題において著作物を利用する場合、学校の課題であったとしても、間違いなく権利者の許可がいる状態になります。
ちなみに、結果的に関係者以外の誰にも見られなかったとしても、不特定多数に見えてしまうようなところにアップした時点で、制限規定から外れてしまうので、やはり権利者の許可が必要です。
なお、クラウドストレージ等に置く場合も、授業の関係者以外がアクセスできないように、パスワードを設定したり、アクセス制限を掛けたり等の対策が必要になります。
「不特定多数に公開して意見をもらおう」のような課題が出たら・・・繰り返しになってしまいますが、以下記事に記載したような事に配慮して取り組んで頂ければと思います。
まとめ
この記事では、
・学校の授業で既存の楽曲を利用しようと思っている方 ・楽曲を使うような課題を出された学生の方
に向けて、楽曲を利用する上で注意すべきことについて、ピックアップして記載しました。
・学校の授業は例外!権利制限規定(教育機関における複製等)について
・企業の研修やセミナー、学習塾等、”営利目的”での利用は対象外!
・インターネットを介した受け渡し、映像授業などもOKとなったが、補償金が必要!
・学校の課題だからと言って、授業に関係のない人に渡したらダメ!
教育目的だからと言って、なんでもかんでもOKにはならなさそうですから、参考にして頂ければ幸いです。
※以上は本記事の配信時点の調査情報です。以後情報が変わる可能性がありますこと、ご了承ください。
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