2021年1月23日に、「コスプレ著作権ルール化へ」というニュースが話題になりました。
コスプレイヤーさんにとってはとても心配になるニュースだったと思います。
しかし実は、以前に似たような話題で世間が騒いだことがあったんですね。
それは、2011年頃から話題になっていた、「TPPの影響による著作権侵害の非親告罪化」というものです。
これにより、同人誌やコスプレなどの二次創作文化が無くなってしまうかも?という心配が世間に広がりました。
しかし、関係者の努力により、”悪質で大規模なもの”を狙い撃ちして非親告罪化し、同人誌やコスプレなどの二次創作に代表されるような、権利者が必ずしも取り締まりを求めていないようなものは、親告罪のまま残すという、バランスが取れた法改正が2018年に行われ、いったんこの問題は落ち着きを見せたかと思われました。
しかし、そのことをぶり返すかのように、なぜか今、「コスプレ著作権ルール化」という動きが出てきています。
こちらについて私含めて気になった方も多いかと思いますので、調査・考察してみました。
※以下は本記事の配信時点の調査情報です。以後情報が変わる可能性がありますこと、ご了承ください。
TPP:著作権侵害の非親告罪化とは?
「TPPの影響による著作権侵害の非親告罪化」って・・・何・・・?
一言では説明しにくいので・・・以下をどうぞ!
先ほどの文章の中で、「TPPの影響による著作権侵害の非親告罪化」という言葉が出てきましたが、そもそもこれはどういう事でしょうか。
まず、TPPですが、これは誤解を覚悟で簡単に言うと「モノやサービスを仲間の国どうしで取引しやすくする約束事」ですね。
関税の撤廃がメインなのですが、国同士でやり取りするモノやサービスに関するルールが異なれば、取引のハードルになる場合もありますから、こういったルールに関してもできるだけそろえていくこともセットで盛り込まれています。
もちろん、アニメや漫画、音楽などの著作物に関しても、商品やサービスという側面がありますから、著作物に関するルールもTPPを機に見直されることになりました。
その中の一つとして、「著作権侵害の非親告罪化」もテーマに上がりました。
侵害を受けた著作権者が自ら訴えなくても、検察などが動いて裁判を起こすことができるようになる、というものです。
日本の著作権法では、著作権侵害の大半は「親告罪」(一部例外あり)のため、著作権者が自ら動かなければ、裁判沙汰になることはないのですが、実は海外から見るとこれはかなり特殊な状態だそうです。
だからこそ、著作権者の不利益にならないような範囲の二次創作行為については、厳密にいえば著作権侵害に当たるような事であっても、権利者の「黙認」のもと、活発に行われ、世界に類を見ない独自の文化が花開いているとも言えます。
しかし、「非親告罪化」により、二次創作行為が望まない形で立件されるようになってしまい、二次創作文化が無くなってしまうのでは?という心配が、関係者の間で広がりました。
結局、「非親告罪化」の話はどうなったのか?
「非親告罪化」で、二次創作文化はなくなってほしくないです!結局どうなったの?
関係者の努力により、一部を除いて親告罪のまま維持されました。二次創作文化も維持されそうです。
結局、「非親告罪化」の話がどうなったかというと、関係者の努力で、以下の引用部の要件を全て満たす場合のみ、非親告罪化しただけで、その他は親告罪のまま維持されました。
(引用文が少し長いですが、直後に一言でまとめておりますので、「ウッ」となった方は引用部はスルーしても大丈夫です)
[1]侵害者が,侵害行為の対価として財産上の利益を得る目的又は有償著作物等(権利者が有償で公衆に提供・提示している著作物等)の販売等により権利者の得ることが見込まれる利益を害する目的を有していること
[2]有償著作物等を「原作のまま」公衆譲渡若しくは公衆送信する侵害行為又はこれらの行為のために有償著作物等を複製する侵害行為であること
[3]有償著作物等の提供又は提示により権利者の得ることが見込まれる「利益が不当に害されることとなる場合」であること
これにより,例えばいわゆるコミックマーケットにおける同人誌等の二次創作活動については,一般的には,原作のまま著作物等を用いるものではなく,市場において原作と競合せず,権利者の利益を不当に害するものではないことから,上記[1]~[3]のような要件に照らせば,非親告罪とはならないものと考えられる一方で,販売中の漫画や小説の海賊版を販売する行為や,映画の海賊版をネット配信する行為等については,非親告罪となるものと考えられます。
文化庁:環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(平成28年法律第108号)及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律(平成30年法律第70号)について
一言でいうと、「二次創作は親告罪のまま、海賊版は非親告罪にするよ」、ということです。
当時から問題になっていた、漫画村などの「海賊版に対しては厳しく」、「二次創作には引き続き優しく」という、バランスが取れた、ファインプレー法改正だと思います。
ただし、これは法改正とは関係ない話なのですが、そもそも二次創作は厳密に言うと著作権侵害行為にあたることが多く、権利者と二次創作者の「暗黙の了解」で成り立っている文化ですから、「親告罪=侵害ではない」は間違い、という事は付け足させてください。
残された課題:非公式コスプレグッズ問題!
じゃあコスプレ関係も安心だね。なんでいまさら騒いでるのかわからないや。
実は・・・”非公式コスプレグッズ”の問題は残されていそうですよ。
ではなぜ今更「コスプレルール化」という話題がニュースになっているのか、という理由の一つとして、「非公式コスプレグッズ」という問題があるのではと私は思っています。
さきほどの法改正内容だと、「原作のまま」という要件が盛り込まれていたため、漫画村などの海賊版サイトでやり取りされている漫画などは、まぎれもなく「原作そのもの」ですので、非親告罪化の範囲ですが、
「非公式コスプレグッズ」などは、「原作のそのもの」ではありませんから、「原作のまま」とはならず、非親告罪化の範囲にならない可能性があります。
非公式コスプレグッズがはびこると、公式に許可を得て、権利者に利益を還元する形でグッズを販売している正規のメーカーさんがバカみたいですし、
何よりグッズは権利者が創作活動を行うための貴重な収入源であり、「権利者の利益を不当に害して」いますから、本来ならここも非親告罪にして厳しく取り締まりたいところだと思います。
そういったこともあって、コスプレ界隈については、引き続き関係者がルール整備の活動をされているのだと思います。
どれくらい非公式コスプレグッズが世に出回っているかというと・・・
どのくらいコスプレグッズが世に出回っているか、参考までに業者名は伏せて、Amazonで売れ筋の商品を出している業者の商品ラインナップを検索してみました。
「○○風」という商品名のものは、たいてい権利者に許可を取らずに勝手に作っているものだそうです。
確かに、正当に許可を取っているものであれば、わざわざ「風」をつけなくても良いですから、判断材料の一つになりそうです。
それではいきます。
・かぐや様は告らせたい 四宮かぐや 風 コスプレ かぐや様 冬服 制服…(以下略)
・バンドリ 花園たえ 風 コスプレ 衣装 仮装 BanG Dream! コスチューム…(以下略)
・ノーマン 約束のネバーランド 風 コスプレ ユニフォーム…(以下略)
・銀魂 高杉晋助 風 着物 ウィッグ 付き 豪華セット…(以下略)
・だがしかし 枝垂ほたる 風 コスプレ 衣装 しだれ…(以下略)
・・・その他、「○○風」多数。
な、なんじゃこりゃー!ほぼ全部○○風じゃないか!
しかも、結構いい値段で売られています。
確かに、このまま放置するのはマズそうな気もします。
作品へのリスペクトと権利者のビジネスを邪魔しない配慮が必要
「○○風」でも、商品が充実しているので、飛びついてしまいそうです。
そうですね。でも、このままいくと権利者のビジネスが疎外され、創作活動に影響が出る可能性もありますから、常に作品へのリスペクトと、権利者のビジネスを邪魔しないような配慮が必要ですよね。
私もコスプレはしないものの、漫画やアニメの文化が大好きです。
このような文化のある事が、日本に生まれて良かった、と思えるポイントの一つになっており、この独自の文化が発展していくことを望んでいます。
同じように望んでいる方は多いでしょうから、きっと今回の「コスプレルール化」の件も、発展の土壌の一つである二次創作文化、コスプレ文化を絶やさない形でのファインプレー対応が行われていくと信じています。
さらに、多くの方が「作品へのリスペクト」と、そこから生まれる「権利者のビジネスを邪魔しない配慮」を持つことで、それを後押しすることができるのだと思っています。
まとめ
この記事では、以下トピックで「コスプレ著作権ルール化へ」というニュースに対して、ちょっと深堀して調査・考察してみました。
・TPP:著作権侵害の非親告罪化とは?
・結局、「非親告罪化」の話はどうなったのか?
・残された課題:非公式コスプレグッズ問題!
・作品へのリスペクトと権利者のビジネスを邪魔しない配慮が必要
日本の、特にアニメ、マンガ関連の二次創作文化は、国際的にみてもかなり特殊で、だからこそ独自のコンテンツを生み出し、海外から高い評価を受けていると思います。
コスプレも同じく日本が誇る文化ですから、関係者の方々の努力により、バランスが取れる仕組みが出来上がっていくものと思われます。
さらに、多くの方が「作品へのリスペクト」と、そこから生まれる「権利者のビジネスを邪魔しない配慮」を持つことで、それを後押しすることができると思います。
この記事がそれを喚起するきっかけになれば幸いです。
※以上は本記事の配信時点の調査情報です。以後情報が変わる可能性がありますこと、ご了承ください。
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