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【映画の著作物】監督に著作権はない?他の著作物との違いを解説!(ドラマなど映像作品全般や、ゲームも映画扱い)

最近、「ファスト映画」に対する取り締まりのニュースをよく見るようになりました。

また、北野武監督が、自身が監督を担当した映画の著作権をめぐってバンダイと係争になっているニュースが流れるなど、映画界隈の著作権が注目を浴びています。

映画の著作物については、他の著作物と違い、いろいろと特殊事情があり、その特殊事情がこのようなニュースを読み解くうえでの障害になっていると思います。

そこで今回は、映画の著作物に関して、他の著作物との違いを中心に解説してみたいと思います。

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「映画の著作物」の範囲

本題に入る前に、そもそも「映画の著作物」にどういったものが含まれるかを確認しておきます。

「映画の著作物」に分類されるもの

・劇場用映画

・テレビドラマ

・ネット配信動画

・ビデオソフト

・ゲームソフト

・コマーシャルフィルム

など

となっており、劇場用映画など、一般に「映画」と呼ばれているもの以外に、いわゆる「映像作品」と呼ばれるものは著作権法上は「映画」に含まれるのです。

意外なところでは「ゲームソフト」も映画の著作物に含まれます。

判例上、「三国志Ⅲ」に関しては映画の著作物に含まれない、とされたこともあり、すべてのゲームソフトが映画の著作物に分類されるかは議論のあるところですが、一般的にはほとんどのゲームソフトが映画の著作物に含まれると解釈したほうが良いです。

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映画の著作者と著作”権”者

映画に関して最も他の著作物と異なる部分は「著作者と著作権者が初期段階で分離されている」ことです。

「著作者」と「著作権者」は、言葉は似ていますが、意味は違います。

「著作者」=作品を創作した者

「著作権者」=著作権を持っている者(作品の権利を行使できる者)

です。

著作権に関しては、他人に譲渡可能な権利のため、著作者が著作権者ではなくなることもありますが、作品が生まれた瞬間については著作者が著作権を持っています。

しかし、映画の場合は、必ずしもそうではないのです。

著作”権”者は製作委員会などの出資者

映画は、監督を筆頭に、衣装、美術、カメラマン、音響技術者、映像編集者など、多種多様なクリエイター、つまり著作者がコラボレーションして出来上がっています。(すごいクリエイターが全部自分でやってしまう個人制作作品などの例外を除く)

しかし、その著作”権”に関しては映画の制作費その他の経済的リスクを負った出資者(主に複数社からなる「製作委員会」)に帰属することがほとんどです。

一見するとクリエイターだけが損をしているように聞こえてしまいますが、映画がコケればとんでもない損失が発生するのは出資者のほうですから、よりリスクを取っている出資者のほうにリターンがあって然るべき、という考えに立てば、納得できます。

したがって、グッズの販売やTV放送、ネット配信など、映画を使ったビジネスに対して許可を出す権利があるのは、実際に映画を作ったクリエイターたちではなく、出資者となり、当然その売上が入ってくる先も出資者となります。

一方、監督など実際に映画を作ったクリエイターに何の権利もないかというと、そうではなく、まぎれもない「著作者」であるわけですから、「著作者人格権」に関しては移転できず残っています。

※というのが実情のようですが、著作権法上は「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」が映画の著作権者であるという定義となっており、法解釈だけだと誰が原始的な著作権者か、曖昧であることは補足しておきます。

ですので、望まない改変などがあった場合は、同一性保持権などを根拠に、その行為を差し止めることはできます

なお、制作会社が、制作委員会に所属することで、著作権の一部を持ち、映画が成功した場合のリターンもしっかり確保する、という方式が取られる場合も珍しくないです。

例えば、「鬼滅の刃」の製作委員会は、アニプレックス、集英社、そしてアニメ制作会社であるufotableの3社となっており、作品ヒットにともなうリターンはufotableにも還元されていると思われます。

楽曲提供した音楽家や原作者は例外

原作者、音楽家、(場合によっては脚本家も)に関しては、「クラシカル・オーサー」と呼ばれ、映画に対して彼らが提供した著作物に関しては、例外的に出資者などに著作権が渡りません

既存の小説や漫画を映画化する、既存の楽曲を映画のテーマソングに据えるなどのシチュエーションを考えると、映画を制作したら映画会社にその著作権が渡ってしまった、という事態は受け入れがたく、この措置の意図は理解しやすいですね。

ただ、そもそも映画専用に作曲した音楽や、映画専用に書き上げられた脚本なども、そういった扱いになるのは違和感があり、良し悪しがあるところです。

製作委員会が著作権を保持していないことで、問題になるケースとしては、まだネットが隆盛していなかった時代に作られた映画を、ネット上で配信する時など、映画製作時に原作者や音楽家が許諾していなかった販売方法や利用方法が発生した時です。

こういった場合、「クラシカル・オーサー」が保有している原作や音楽の著作権を背景に、その行為を差し止めることができてしまいます。

これは相当に強力な権利で、「クラシカル・オーサー」の許諾が無ければ製作委員会などのビジネスが事実上展開できなくなってしまいます。

・・・というのが机上のお話になるのですが、実際にトラブルになることは稀で、事業者協会同士である程度の料金規定があり、その料金を脚本家や音楽家に支払うことで、概ね利用が許諾されるようになっているようです

保護期間の算定開始が著作者の死後ではなく公表後から

もう一つの例外は、保護期間の算定方法です。

保護期間とは

著作物が著作権法で保護される期間(保護期間)は、有限であり、基本的に著作者(作者)の死後70年となっています。

保護期間が終わると、「パブリックドメイン」といって、著作権の制限を受けず、みんなが自由にその著作物を利用してよい、という状態になります。

クラシックの楽曲はBGMとして自由に利用してよい、という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは、クラシックに分類されるほとんどの楽曲が、作曲家の死後70年以上が経過しており「パブリックドメイン」となっているからなのです。

「著作者の死後」ではなく、「映画の公表後」70年

映画に関しては、保護期間についても例外的扱いがあります。

殆どの著作物が、基本的に著作者の死後70年となっているのに対して、映画の著作物に関しては、公表後70年です。

著作物の公表とは、「著作物が著作権者の許諾を得て上演、演奏、上映等の方法で公衆に提示された場合」のことです。

映画の場合は、観客に対して最初の上映が行われたとき、ととらえておけば良いでしょう。

まとめ

映画の著作物に関して、他の著作物との違いを中心に解説してみました。

ニュースなどを読み解くうえでの参考になれば幸いです。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

※記載の情報は記事投稿時点でのものであり、今後変更になる可能性があります。

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