もう10年近く現役から離れてしまっていますが、私はPCを使って作曲をしていました。
最近、思い立ってAudiostockにクリエイター登録し、過去に作った数曲を審査に出してみました。
Audiostockとは、ロイヤリティーフリーの音楽ダウンロードサービスです。
利用者は、サービスに定額制加入したり、作品をダウンロード購入すれば、動画やゲーム、店舗などのBGMとして対象作品を使う権利を得ることができます。
それだけでなく、音楽のクリエイターにとってもメリットがあるサービスとなっています。
そのメリットとは、Audiostockにアップロードした作品が利用された場合、作品のクリエイターがその収益の一部を受け取れるというものです。
いわば、音楽を使う人と、作る人のマッチングサービスですね。
Audiostockに登録することによって、クリエイターの著作権はどのように扱われるのか?
いざ、自分が当事者になってみると、大変気になります。
そこで、今回はAudiostockとクリエイター間で結ばれている契約に関して、著作権的観点から解説してみます。
ピンポイントですが、Audiostockに作品をアップロードしている方や、これからしてみようと思っている方にとって参考になればと思います。
Audiostockに会員登録後、以下の紹介リンクから定額制スタンダードプランを利用開始すると、初回3,300円分の割引特典があります!
※キャンペーンは予告なく終了することがありますので、詳細はAudiostockのサイトにてご確認ください。
契約内容=「Audiostockクリエイター利用規約」
クリエイター登録時に契約が完了している
「Audiostockクリエイター利用規約」の序文に、以下の記載があります。
「Audiostock」をクリエイターとしてご利用になる際には、この「Audiostockクリエイター規約」(以下、「本規約」といいます。)が適用され、クリエイターと当社との契約の内容となります。なお、本規約については、会員が利用登録した時点で同意されたものとさせていただきますので、ご利用の前に必ずお読みください。
Audiostockクリエイター利用規約より
とのことです。
クリエイター会員登録をした時点で、この規約が適用され、会員登録=同意とみなされるようです。
会員登録にあたって、この規約をきっちりと読まされた記憶はありませんが、どこかに出ていたのでしょう・・・
最近のサービス契約は、さり気なく出てくることが多いですが、クリエイターの著作権に関わる大事な内容だと思いますので、是非とも目を通されることをおススメいたします。
あくまで”非”独占的利用契約
さて、クリエイター利用規約=契約内容という事で、著作権に関する扱いについても、この規約に記載されています。
非独占契約と独占契約の違い
作品利用契約において、重要なポイントが「独占」か「非独占」です。
クリエイターは、前条に基づき作品等を申請し、当社がこれを承認した場合、当社に対して時期や地域の制限なく、作品のライセンスを販売し、本サービスの会員に利用権を与える非独占的権利を許諾します。
Audiostockクリエイター利用規約より
「当社に対して時期や地域の制限なく」とありますので、アップロードされた段階で海外での販売なども許諾していることになります。
また、非独占的権利を許諾というのが非常に重要なポイントです。これが、「独占」か、「非独占」かで、まったく条件が変わってきます。
Audiostockの場合は「非独占」ですから、クリエイター自身がAudiostock以外のサービスに登録し、そこで同じ作品を有料販売をしようとも、問題ないわけです。
これが、「独占」の場合は、クリエイター自身であっても、Audiostock以外のサービスを使って有料販売したり、CD等を販売した場合に契約違反になってしまいますから、「非」の一文字があるかないかで全く状況が異なってきます。
著作権は譲渡されない
当社への非独占的権利を許諾するにあたって、作品等の著作権及び著作隣接権の移転などは行われず、これらの権利はクリエイターへ留保されるものとします。 クリエイターは、本規約に反しない範囲で、本サービス内で販売される作品等を他社のサービスやクリエイター自身のCDなどで販売することができます。
Audiostockクリエイター利用規約より
また、作品の著作権がAudiostockに譲渡されるわけではなく、クリエイターに留保されますから、権利そのものの移動はありません。
なお、もし「著作権を譲渡」してしまうと、今後、仮に規約に存在しない使われ方をされたとしても、クリエイター本人がその利用を差し止めたり、訴えたりすることが難しくなってしまいます。
こちらを図にまとめると、以下のようになります。
「著作権譲渡」でもなく、さらに「非独占」の利用許諾ですから、(以降で説明する内容は踏まえたうえで)比較的範囲を抑えた、正当な契約内容だと思います。
なお、Audiostock以外の、類似サービスを利用される際は、「著作権譲渡」または「独占」契約になっていないかの2点だけでも、しっかりと確認する必要があるでしょう。
ダウンロードユーザーに利用される範囲について
さて、「非独占」だから完全に安心というわけではありません。
作品をダウンロードしたユーザーや、Audiostockにどのように利用されることを(クリエイターが)許諾しているのか
についても、規約=契約内で定められており、この内容は「クリエイターが許諾」してしまっていますから、見ておいて損はないと思います。
以下、全部ではなく、ポイントを絞って解説しますので、気になった方は、規約全文を読んでみることをおススメします。
規約の書かれ方は、NG項目(除外項目)が列挙してあって、「NG項目以外に関しては許諾してもらいます」というものなので、NG項目以外で利用してほしくないシーンが考えられる場合は、よく考えてから作品をアップロードしてください。
改変できる範囲
作品の改変に関しては以下がNG項目として定められています。
当該作品を著しく改変して利用すること(音量調節、フェードイン・フェードアウト、ループ処理、カットその他の軽微な音質調整は除きます。)
Audiostockクリエイター利用規約より
(音量調節、フェードイン・フェードアウト、ループ処理、カットその他の軽微な音質調整は除きます。)とあるので、このあたりはされてしまっても許容という事になります。
例えば、めちゃくちゃ気合を入れて作ったリフ部分が使われず、そうでもない箇所のみが使われていたとしても、文句は言えませんし、BGMとして使われた場合に、ナレーションが入る部分で逐一音量調整(ダッキング)がされていても、音量調整の範囲で文句は言えないと思います。
ちなみに、著作権界隈では、上記のようなカット行為が問題を引き起こしたことがありますから、著作権的にどこまでが「改変」にあたるのかという事が、いまだに曖昧となっています。
曖昧な「改変」の定義を、規約で明確化していると言えるでしょう。
そうはいっても、「著しく改変」については、なお曖昧なのですが、アレンジ、リミックス、サンプリングして別楽曲に利用などは、おそらく「著しく改変」にあたる事が多いと思われますので、これが行われた場合は文句を言っても大丈夫な範囲と思います。
※補足すると、SEやリズムトラックなどの音楽素材として販売されている作品に関しては、その特性上、正規に作品を購入した別のクリエイターの作品中で使用されたとしても、「改変」にはあたらないかと思います。
第三者への販売や利用許諾
第三者への販売や利用許諾について、以下がNG項目として定められています。
当該作品及びその複製物等を第三者に販売、転貸又は譲渡すること若しくは第三者に対して当該作品の利用を許諾すること
Audiostockクリエイター利用規約より
当該作品及びその複製物等を、不特定の第三者にインターネット上でダウンロードさせて利用させること
Audiostockクリエイター利用規約より
ここで注意したいのは、「当該作品及びその複製物」というところです。
ユーザー向けの利用ガイドでは、BGMやSEとして作品が使われている映像やゲーム等を「販売」して良い、となっていますが、映像やゲーム等には、当該作品が「複製」されていますから、クリエイター利用規約と矛盾するようにも思えます。
ユーザー向けの利用ガイドと、クリエイター利用規約が矛盾していない、という前提に立つと、この条項での「当該作品及びその複製物」は、「作品単体、もしくはその複製物単体」のことを言っていると思われます。
つまり、Audiostockからダウンロードした作品を、そのままCDなどに収録して販売したり、別のダウンロードサイトにアップしたり、誰か一人がダウンロードしたものを仲間内で使いまわす等の行為を禁止しているものと思われます。
それをやられてしまうと、クリエイターもAudiostockも、商売が成り立ちませんからね。
店舗BGMとして利用する場合の制限
店舗でBGMとして利用する場合について、以下がNG項目として定められています。
当該作品及びその複製物等を、店舗や施設内におけるBGM(背景音楽)として利用する場合であって、作品一点の購入に対し、一つの店舗又は施設内での利用を超え、複数の店舗又は施設にまたがって利用すること
Audiostockクリエイター利用規約より
1購入につき、使用してよいのは1店舗のみとのことです。
例えば、同じ人が経営している店舗が3店舗あった場合で、3店舗とも同じ作品を使用したい場合でも、基本的には3回購入して下さい、というように読めます。
例えば、大手チェーン店などがBGMとして作品を利用するにあたって、1回分の購入で数100店舗に対して流せてしまうと、割に合わないですよね。
ただ、1アカウントで同じ作品を複数回購入できないと思われるため、店舗向けプラン的な、別立ての料金設定が無いと実際には機能しない規約なのかも、と思いました。
※・・・と思って、気になって調べてみたら、既に以下のようなサービスがありました。
氏名表示権の不行使条項
クリエイター(著作者)には、「氏名表示権」という、著作権法上の権利があります。
作品の公表にあたって、クリエイターの名前を表示するか否か、また、変名(ペンネームやハンドルネーム等)とするかを決められる権利です。
※氏名表示権について詳しく知りたい方は、以下記事もご覧ください。
作品と共に表示されるクリエイターの名前が勝手に省略されるなどの事態が起こった場合、クリエイターの氏名表示権を侵害する可能性があります。
しかし、Audiostockクリエイター利用規約には、以下のような条項があります。
クリエイターは、前項各号に定める除外事項の場合を除き、本サービス上で作品等を購入した会員が、前二項に定める利用許諾の範囲内において作品等を利用することにつき、当該作品等のクレジット表記の義務付けその他の氏名表示権を行使しないものとします。
Audiostockクリエイター利用規約より
こちらの条項があるので、「自分の作品を使った場合はクレジット表示をしてください」などのお願いを利用者に対してする場合は、あくまでお願いレベルであって、クレジット表記されなかったからといって文句は言えない可能性が高いです。
著作隣接権に注意
最後に、案外見落としがちな著作隣接権に関して記載させていただきます。
演奏家の権利に注意!
クリエイター利用規約において、クリエイターが保証しなければいけないことの一つに、以下が定められています。
作品等について、著作権、著作隣接権及びパブリシティ権を含む一切の権利を保有していること
Audiostockクリエイター利用規約より
著作権については、作曲したクリエイターの権利ですから、誰かに譲渡していない限りは、クリエイター自身が保持しています。
一方、著作隣接権については、演奏家やレコード製作者などが保持しています。
個人制作の場合は、レコード製作者についても、クリエイター自身であることが多いでしょう。
※レコード製作者の権利について、詳しく知りたい方は、以下記事もご覧ください。
問題は演奏家の権利です。
例えば、作品の1トラックに、生ギターを入れたいと思い、知人のギタリストに演奏を頼むなどのケースは、比較的よくあるのではないかと思います。
その作品のギタートラックには、その知人の「演奏家(実演家)の権利」という、「著作隣接権」が入り込むことになります。
Audiostockクリエイター利用規約によると、著作隣接権についてもクリエイターが保有していなければなりませんから、友人のギタリストから権利を譲渡してもらう必要があります。
著作隣接権は、契約により譲渡してもらうことが可能で、契約は口約束でも成立しますが、本来は契約書という形で、著作隣接権の譲渡にお互い合意した旨を残しておくのがベストでしょう。
知人間で契約書のやり取りは仰々しいという場合は、メール等を使って、やり取りの内容が残る形で保管しておくのが良いと思います。
まとめ
Audiostockとクリエイター間で結ばれている契約、Audiostockクリエイター利用規約に関して、著作権的観点から解説してみました。
他にもご紹介したい内容があったのですが、重要だと思ったものだけをピックアップして解説しました。
気になった方は、クリエイターの著作権に関わる大事な内容だと思いますので、クリエイター利用規約に是非とも目を通されることをおススメいたします。
Audiostockに会員登録後、以下の紹介リンクから定額制スタンダードプランを利用開始すると、初回3,300円分の割引特典があります!
※キャンペーンは予告なく終了することがありますので、詳細はAudiostockのサイトにてご確認ください。
※記載の情報は記事投稿時点でのものであり、今後変更になる可能性があります。
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