Twitter社が、2021年中に、ユーザーによる収益化の仕組み、「Super Follows(スーパーフォロー)」の導入を計画していることが、少し前から話題になっています。
「Super Follows」は、料金を支払ったフォロワーのみが、特定のコンテンツを読めるようにするというものです。Youtubeの「メンバーシップ」機能が近いですかね。
現在は、Twitterで直接収益を上げる方法はなく、TwitterでPRを行いつつ、他のコンテンツを利用してもらう等の方法しかありませんが、上記により直接収益を上げる方法が誕生します。
一部のユーザー向けですが、「スーパーフォロー」に加え、音声のライブ配信を行える「スペース」を有料で提供する「チケット制スペース」も試験導入され始めました!
さて、こういった収益化手段が用意されると、にわかに盛り上がってくるのが著作権界隈です。
直接収益が上げられる手段が用意されることにより、一部のユーザーはそれで生計を立てようと頑張りますから、他者のコンテンツを無断利用してでも、インプレッションを上げようとするユーザーの増加が予想されます。
これにより不正行為がニュースなどで取り沙汰されることにより、取り締まりが厳しくなる・・・なんてことも充分に考えられます。
もし、あなたが今後「Super Follows」などを使って自分のTwitterアカウントを収益化しようとしているのであれば、著作権まわりで注意すべき事を知っておいて損はないでしょう。
そこで今回は、Twitterを利用するにあたって、著作権的に注意したほうが良いことを5つ紹介します。
1.無断転載、パクツイはNG
無断転載→NG
ネット上で拾ってきた画像や写真、漫画のコマのスクリーンショットをそのままアップロードしたりすることは、無断転載に当たります。
著作権法でいうところの「公衆送信権」侵害になってしまいます。
たとえそのツイートが誰にも見られなかったとしても、「不特定または多数からアクセスできる状態」にした時点で、著作権侵害になってしまいますので、注意しましょう。
また、元の画像や写真が何なのか分かる状態で、加工を加えてアップロードする場合、「公衆送信権」を侵害するだけでなく「無断改変」にもあたるため、さらに注意が必要です。
パクツイ→NG
他人のツイートをそのままコピー、あるいは意図的にアレンジして、あたかも自分が書いたようにツイートすることを「パクツイ」と言います。
ツイートした内容が著作物でなかった場合は、その他の問題は置いておいて、当然のことながら著作権侵害にはなりません。
著作権侵害になるのは、ツイートの文章自体が著作物とみなされる場合です。
「おはよう」や「今日も暑いですね」のような、普通の会話文や、「こういう事件がありました」などの事実や単なる情報なら問題ないですが、1ツイートの上限である140文字の中でも、短い詩や俳句など、創作性があるもの(=著作物)が表現できてしまうことがあります。
このようなツイートをそのまま、あるいは元ネタが分かるような状態でアレンジしてツイートすることは、複製権や翻案権などの侵害にあたります。
ただし、Twitterの場合、投稿できる文字数が短いという特徴から、意図せず他人の創作性のあるツイートと似通ったツイートをしてしまうこともあると思います。
元の内容を知らず、たまたま似てしまった場合は、そのことを証明できるか否かは置いておいて、著作権侵害にあたりませんので、胸を張ってツイートして問題ありません。
※反対に、元のツイートの内容を知りながら、意図して似通らせることを「依拠」と言い、この場合は著作権侵害にあたります。
“引用”→OK。(ただし、条件を満たすのはTwitterでは難しい?)
著作物の一部だけを参考として掲載する場合で、以下の条件を満たしている場合は、”引用”にあたり、著作権侵害にはあたりません。
(1) 公表された著作物であること
(2) 公正な慣行に合致すること
(3) 目的上正当な範囲で行われること
(1)公表された著作物であること
(2)や(3)の条件を満たしていても、公表されていない著作物(まだ出版されていない本の一節を引用する場合など)は、“引用”とみなされないため、注意が必要です。
(2)公正な慣行に合致すること
この条件の表現はかなり曖昧なのですが、「出典元の明記(「~~~より引用」などを明記する事)」や、「内容を改変しないこと」は、この条件に含まれるとされ、抑えておいたほうが良いポイントです。
(3) 目的上正当な範囲で行われること
この条件も複数の要素に分かれます。
他の人が見たときに、どこからが引用で、どこからがそうでないか、を区別できるようにする必要があります。(明瞭区分性)
例えば、引用部分だけを””で囲む、引用部分だけを斜体にする、などの方法が挙げられます。
また、引用する必要性、という条件も満たさなければなりません。
例えば、小説で出てきた一文について感想を述べたい場合に、その一文を引用する必要性はありますが、挿絵まで引用する必要があるかといわれると微妙ですので、挿絵を載せた場合は引用として認められない可能性があります。
また、引用と認められるためには、本文がメイン、引用元がサブ、の位置づけにならなければなりません。(主従関係)
たとえば、引用元の著作物が占める割合が、本文に比べて多い場合、引用元がメインで本文がサブという風に見えてしまうため、引用とみなされません。
ただし、Twitterの場合は、文字数制限上、厳密に主従関係の条件を満たすことは難しいのではないかと思います。
そのため、次で紹介する“引用ツイート”は、実はこの引用の条件を満たさない可能性が大いにあると思うのですが、別の理由でOKになっていますので、参考として他の人のツイートを利用したい場合は、”引用ツイート”の機能を使いましょう。
「リツイート」 / 「引用ツイート」→OK
おなじみの「リツイート」「引用ツイート」を使用する場合は、基本的には問題ありません。
※後述の「3.引用ツイート、リツイート時の注意」および「4.著作者人格権に注意」で紹介する点は意識したうえで、です。
本質的には、無断転載やパクツイと同じなのでは?という風に感じるかもしれません。
しかし実は、Twitterとユーザーの間で、以下のような規約が取り交わされており、ユーザーが投稿したツイートに含まれる内容を、他のユーザーがTwitterの機能を使って利用することについて、許諾されていると考えられるのです。
ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿または表示することによって、当社が、既知のものか今後開発されるものかを問わず、あらゆる媒体または配信方法を使ってかかるコンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配信するための、世界的かつ非独占的ライセンス(サブライセンスを許諾する権利と共に)を当社に対し無償で許諾することになります(明確化のために、これらの権利は、たとえば、キュレーション、変形、翻訳を含むものとします)。このライセンスによって、ユーザーは、当社や他の利用者に対し、ご自身のツイートを世界中で閲覧可能とすることを承認することになります。
Twitterサービス利用規約より引用
全てのユーザーがサービス開始時にこれらの規約に同意していると思うのですが、ちゃんと読んでいる人はほとんどいないと思いますので、この規約の有効性については議論があるところではありますが、今のところ有効性が認められる可能性は高そうです。
視点を変えると、ツイートを利用される側の立場の方は注意が必要です。
Twitterにツイートを投稿した時点で、その内容に著作物が含まれていても、他のユーザーによるリツイートや引用ツイートを止めるのは難しいので、Twitterを使う上でのリスクとして受け入れる必要があります。
SNSシェアボタンからのツイート→OK
ニュースサイトやブログなどで、SNSシェアボタンが配置されていることがあります。
これは、その記事をシェアしてもらう事を目的に用意しているので、著作権者が暗黙的に利用を許諾しているものと思われます。
ただし、シェアボタンが用意されていないSNSへのシェアや、記事タイトルや見出しを改変したりすることまでは許諾していると言い難いので、ボタンを押して生成されたツイートをそのまま利用するようにしましょう。
また、シェアボタンの利用方法について、別途規約が定められている場合は、それに従うようにしましょう。
“写り込み”→OK
写真や動画をツイートに付加する場合、自分で撮ったものであっても、そこにキャラクターのぬいぐるみや、ポスターなど、著作物と考えられるものが、意図せず写り込んでしまうこともあると思います。
このように、意図せず著作物が写り込んでしまった場合は、著作権侵害になりません。
ただし、これを逆手にとって、人目を惹く目的などで、意図的に写り込ませている場合や、意図的でなくても、写り込んだ著作物が画面の大部分を占める場合などは、侵害とみなされる場合がありますので、注意が必要です。
また、遊園地など、著作物であふれているような場所での撮影においては、施設ごとにSNSへのアップロードを行う場合のルールが決められている場合がありますので、それを確認するようにしましょう。
2.プロフィール、ヘッダー画像に他人のイラストや写真を無断使用はNG
プロフィール画像やヘッダー画像に、アニメのキャラクター画像や、有名人の写真を使っているアカウントをよく見かけますが、実はこれは著作権侵害にあたります。
先ほど、Twitterの利用規約で、Twitterにアップロードした著作物を、Twitterの機能を使って利用する分には問題ない、という事を紹介しましたが、これはあくまで「その著作物の著作権を持つ人や法人が正規にアップロードした場合」に限られます。
無断でコピーしてきた画像を、無断でプロフィール画像やヘッダー画像に設定することは、その時点で無断転載と同じですので、NGとなります。
現在、これらの行為は厳しく取り締まられている様子はありませんが、アカウントが収益化した場合は、取り締まられる可能性がありますので、特に注意が必要です。
3.リツイート、引用リツイート時の注意
先ほど、リツイートや引用ツイートは、著作物が含まれていても問題ない、という事を記載しましたが、実は注意点もあります。
著作物を含むリツイートや引用ツイートが許されるのは、元のツイートが「その著作物の著作権を持つ人や法人が正規にツイートしたもの」であった場合です。
元のツイートが無断転載されたものであった場合は、著作権侵害に加担したり、巻き込まれたりすることに繋がります。
元のツイートが正規のものか判断するのは、難しいこともあるとは思いますが、注意したほうが良いでしょう。
4.著作者人格権に注意
著作物にまつわる権利として、「著作権」とは別に、「著作者人格権」があります。
著作者人格権とは、著作者の名誉を守るための権利で、主に以下の4つで構成されます。
(1) 公表権
(2) 氏名表示権
(3) 同一性保持権
(4) 名誉声望保持権
1つ1つの説明はここでは省きますが、例えば、(2) 氏名表示権は、作者名を表示するか否か、表示するとして、実名か変名かを決められる権利のことです。
「著作者人格権」は、「著作権」とは異なり、他人に譲渡できないという特徴があります。
この「著作者人格権」が問題になった、Twitterにまつわる有名な判例がありますので、紹介します。
過去の判例:リツイート事件
ものすごく簡単になってしまいますが、事件の概要を記載します。
・ある写真家の方の写真が、AさんによってTwitterに無断転載されました。
・無断転載された写真には、写真家の方の名前が表示されていました。
・Aさんのツイートを、Bさんら複数人がリツイートしました。
・Bさんらがリツイートした際に、Twitterの仕様で、タイムライン上では写真の全体が表示しきれず、写真家の方の名前部分が表示されていませんでした。※ちなみに、写真をクリックまたはタップすると、写真の全体が表示され、名前が表示されるようになっていました。
★この件に関して、写真家の方がTwitter社を訴えました。
というものなのですが、最高裁判決では、以下の点が認められました。
(1) Aさんによる写真の無断転載行為の著作権侵害(公衆送信権侵害)
(2) Bさんらによる著作者人格権侵害(氏名表示権侵害)
(1)は、明らかな無断転載行為ですので、納得です。
しかし、(2)については、Twitterの仕様であるため、Bさんらが気を付けてもどうしようもない問題ともいえるのに、氏名表示権侵害が認められてしまいました。
この判決はいまだに物議を醸しだしており、批判的な意見もありますが、リツイートする場合に、写真に著作者名が表示されている場合などは、この事件を思い出して一度踏みとどまり、対策を考えてみることをお勧めします。
5.音楽のアップロードは特に注意!
TwitterはJASRACやNexToneとの包括契約をしていない
Youtubeなどについては、サービスプラットフォーム側が、JASRACやNexToneといった、音楽著作権管理団体と包括的な契約をしているおかげで、楽曲の権利者と直接交渉しなくても、「歌ってみた」や「弾いてみた」といった、既存の楽曲をカバーしたコンテンツを制作して、公開することができます。
その他、こういったことが可能なプラットフォームは、以下を参考にしてみてください。
利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧(JASRAC)
メジャーなUGCサービスは大抵含まれていますが、なんとこの中にTwitterは含まれていません。(2021/6/15時点)
そのため、既存の楽曲をカバーした動画や音声をツイートに添付するといった事はNGになります。
権利者から許諾を得ている場合や、自作の楽曲などを除き、「スペース」の音声配信でも、音楽を流したり演奏したりする事は、今のところNGです。
音楽関係は、JASRACやNexToneといった管理団体が精力的に活動しているため、他の分野より特にチェックが厳しいです。
こちらのフローチャートを確認すると、直接表示先のサイトに動画データをアップせず、Youtubeにアップした動画を埋め込み形式でリンクする場合でも、収益を得ている場合は、許諾手続きを行うことが求められています。
将来的にアカウントが収益化した場合かつ、その時点でなおもTwitterが著作権管理団体と包括契約をしていなかった場合は、既存曲のカバー系のコンテンツをツイートするというのはリスクがあると言えるでしょう。
それでも引っかからない方法。著作権フリーBGMならOK
音楽を流すハードルはとても高い・・・と思われるかもしれませんが、購入者がライブ配信などで使ってよい、と明記されている著作権フリーBGMであれば、使用して問題ありません。
こういった楽曲はそもそも著作権管理団体に登録されていない楽曲ですから、JASRACやNexToneは関係ありません。
雰囲気づくりや会話の間を埋めるのに適した著作権フリーBGMは、たくさん存在します。
Audiostockなどのストックオーディオサービスから購入することも可能ですが、1曲あたりの値段が結構高いことも。
他の選択肢として、意外に「著作権フリーCD」が侮れません。例えば以下のようなものです。
何曲も入ってストックオーディオサービス1曲分と同じかそれより安いくらいの価格。コスパが良いです。
スペースでのBGMの流し方
著作権的にクリアできている前提ですが、スペースでのBGMの流し方の記事を書きましたので、ご興味があればこちらもお願い致します。PCをお持ちの方に関しては、ほとんど追加投資のかからない方法になります。
まとめ
Twitterを利用するにあたって、著作権的に注意したほうが良いことを5つ紹介しました。
今後、Twitterでも直接収益が上げられるようになっていくと、より著作権に関して厳しく取り締まられる事も考えられますので、紹介した5つは知っておいて損はないでしょう。
特に、Twitterアカウントの収益化を考えている方にとって、この記事が参考になったのであれば幸いです。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
※記載の情報は記事投稿時点でのものであり、今後変更になる可能性があります。
「Twitter」は、Twitter, Inc.またはその関連会社の登録商標です。
コメント