オリエンタルラジオ中田敦彦さんが、2022年5月14日に、自身のYoutubeチャンネル、「中田敦彦のYouTube大学 – NAKATA UNIVERSITY」に配信された動画の中で、マンガ&音楽をテーマとした新プロジェクト「曼陀羅東京」を立ち上げたことを発表されました。
マンガやアニメと、ボカロに代表されるような、ネット時代の音楽カルチャーのミックスついては、特別に珍しい試みではなく、SONYやavexなど、日本の大手レコード会社もこの方向に力を入れてきていますから、今のエンタメ業界では正攻法なのかなと思います。
注目したいのは、最初から二次創作に関して許容していくという事とセットで打ち出された、というところ。
会社や制作委員会などの、様々なステークホルダーの都合が絡みあう世界のプロジェクトではなく、中田さんというフットワークが軽く決断力の高い方が主導するプロジェクトであるため、このような事が実現しやすいのだと思われます。
ただし、全面許容といっても、著作権を放棄しているわけではないので、もしこれから何らかの形で「曼陀羅東京」に関わるコンテンツを作成しようとされている方は、注意されたほうが良い点がいくつかあります。
今回は、そんな注意点を明らかにするため、第一弾楽曲「成仏させちゃうぞ」の素材の中にあった利用規約文を読み解いていきたいと思いますので、以下のような方に見て頂けるとありがたいです。
それでは宜しくお願い致します。
曼陀羅東京とは
言わずと知れた人気芸人・Youtuberであり、タレント活動のみならず、数々のプロジェクトを立ち上げてきた中田さんが、5月14日、自身のYoutubeチャンネルの動画で、新プロジェクトを発表しました。
その新プロジェクトの内容は、Webマンガを毎月1話ずつ発表、さらに、そのマンガと連動した内容のボカロソングを同時に発表していくというものです。
そのマンガのタイトルが「曼陀羅東京(まんだらとうきょう)」。
※「曼荼羅東京」ではなく、「曼陀羅東京」が正しい漢字表記になります。
近未来の日本を舞台として、日本の社会的な問題も織り込みつつ、特殊能力バトルという王道のエッセンスも組み込んだ内容となっています。
ポイントは、マンガを公式サイトで無料公開、ボカロソングもYoutubeで無料公開するとともに、他のボカロソングと同様に、オケ音源などの素材も無料公開し、「うたってみた」等の二次創作に関してもやりやすくしていることです。
これにより、話題にしやすくしたり、シェアしやすくしたりして、コンテンツが盛り上がる、いわゆる「祭り」の状態にしていきたいという意図があるとのこと。
動画の中では、将来的には単行本を出版したり、アニメ映画を製作、さらに世界で話題となるようなコンテンツに成長させる、という計画も語られました。
早速、賛否両論の意見が飛び交っており、業界に詳しい方からは批判のほうが多い感じもしますが、それも含めて中田さんの思惑通りかもしれないと思わせる、本プロジェクトに注目です。
二次創作とは
二次創作とは、例えば「好きなキャラクターの絵を描く」「好きな曲のカバーをする」など、既存の創作物を元として、新たな創作物を生み出すことを言います。
完全にオリジナルなもののみを「創作物」と呼ぶのではなく、二次創作した人の意図や工夫が入り込んだのであれば、それもまた「創作物」であると言えます。
二次創作は、公開の仕方などによっては違法行為となることがあり、元となる作品や権利者によって、または利用用途によっては厳しく取り締まられることもあります。
ただ、マンガ、アニメ、ボカロなどといった、日本を代表する文化の発展において、今までも大きな役割を担ってきた部分でもあり、ほとんどの場合、ファンが行う分にはむしろ歓迎されてきました。そしてこれからも重要な要素となるでしょう。
「曼陀羅東京」では、コンテンツを盛り上げるために、ファンによる二次創作を積極的に奨励する姿勢を打ち出していますね。
著作権とは
さて、そろそろ本題の「曼陀羅東京」の二次創作において注意すべき事について触れていきたいのですが、その前にもう一点だけ。
「著作権」についてのご紹介です。
著作権というものが、一体何なのか知っておくと、この後の内容が分かりやすくなります。
もし、著作権がよく分からない、という事であれば、以下記事も参考にして頂けると良いかなと思います。
「成仏させちゃうぞ」のOK・NGパターン
第一弾楽曲である「成仏させちゃうぞ」の楽曲&映像素材配布場所(google drive)では、素材ファイルと一緒に、利用規約のPDFも同梱されています。
利用規約のPDFの中で、コンテンツ利用に関する様々なルールが記載されていましたので、これを参考に、こんなパターンはOK、逆にこんなパターンはNGというのを考えていきたいと思います。
大前提:著作権を放棄しているわけではない
二次創作を奨励している、という姿勢のプロジェクトですが、以下にある通り、作品に関連する著作権が放棄されているわけではありません。
当社作品を含め、本サービスにおいて当社が提供するすべての楽曲、映像、画像、文章、データその他の各種コンテンツの著作権その他の知的財産権は、当社または当社にこれらの利用を許諾した第三者に帰属します。
“作品利用に関する利用規約”より
その大前提の上に、以下のような条項があります。
ユーザーは、第5条で許諾されている行為及び当社から個別に許諾を受けた行為を除いて、前項の楽曲、映像、画像、文章、データその他の各種コンテンツの複製、翻案、公衆送信等の利用を行ってはいけません。
“作品利用に関する利用規約”より
第5条に書かれているような利用の仕方はOKだけど、他については個別に許諾を受けてね、という事になります。
そのため、第5条が今回の注目ポイントになってきます。
早速見ていきましょう。
利用目的編
まずは、どんな目的で素材やコンテンツを使用するか?という視点で考えていきます。
第5条はこのように始まっています。
個人のユーザーは、非営利目的の場合に限り、無償で、当社作品に関して以下の行為を行うことができます。
“作品利用に関する利用規約”より
個人かつ、非営利目的である場合は、無償で作品の利用ができるとあります。
個人ですので、会社などの法人が利用される場合は、たとえ非営利目的であったとしても、無償では作品の利用はできないようですね。
また、非営利目的とありますので、作品の利用により何らかの利益が出る場合は、別途許諾が必要になります。
ただし、第6条にこうあります。
ユーザーが動画投稿デジタルプラットフォームにおいて当社作品を利用した動画を無償で公開し、動画投稿先のデジタルプラットフォームが公式に提供している機能(YouTube におけるパートナープログラムやSuper Chat 機能を含みますが、これらに限りません。)から当該ユーザーに副次的に収益が発生したとしても、当社はこれを営利目的の利用とはみなしません。
“作品利用に関する利用規約”より
Youtubeの広告などで収益が発生する事については、OKという事になります。
利用形態編
次に、どのような利用形態がOKなのかを見ていきたいと思います。
こちらも第5条に記載がありました。
(1) 当社作品データを基にユーザー自身の自演の動画(いわゆる「歌ってみた」、「踊ってみた」、「演ってみた(やってみた)」の動画を含みますが、これらに限られません。)を作成し、その動画をインターネット上で無償で公開する行為
“作品利用に関する利用規約”より
歌、ダンス、演奏等での楽曲カバーはOKですね。
(2) 当社作品を基にイラスト、絵、フィギュア又は人形を作成し、それを無償で公開または配布する行為
“作品利用に関する利用規約”より
描いてみた、イラスト投稿、フィギュア制作はOKです。
(3) 当社作品を基にコスチューム等の衣装を作成し、それを無償で公開または配布する行為
“作品利用に関する利用規約”より
コスプレ、コス衣装の制作はOK。
(4) 当社作品を基に同人誌を作成し、それを無償で公開または配布する行為
“作品利用に関する利用規約”より
同人誌の制作もOKです。
(5) 当社作品を基に同人CD、同人DVD 又は同人ゲームを作成し、それを無償で公開または配布する行為
“作品利用に関する利用規約”より
同人CD、DVD、さらに同人ゲームなどのジャンルもOK。
(6) 上記各号に基づいて作成した二次創作作品の写真集や画集を作成し、それを無償で公開または配布する行為
“作品利用に関する利用規約”より
コスプレ写真集や、イラスト画集のことを差すと思われますが、その辺もOKとされています。
二次創作界隈のメインストリームは、おおむねOKとなっています。
同人活動での利用において気になること
1点だけ気になることがあるとすれば、それは二次創作活動にかかる最低限の経費を回収する目的で、制作物を販売することが許されているか否か、という事です。
例えば、同人誌の印刷代を回収するために、即売会の会場で同人誌を手売りするような場合です。
私も知人の同人活動を手伝って、売り子をした経験があるのですが、小ロットでの印刷はなかなかできないため、売れなかった分が100部とかの単位で手元に残ってしまうなんてことはよくあるんですよね。
こういった同人活動にまつわるお金の問題の救済措置(?)として、少額での販売に関してはOKというガイドラインもしばしば見かけます。
例えば、ニトロプラスさんのガイドラインには、販売数量が200個以下、売り上げ予定額が10万円以下ならOKなどの、同人活動の実態を考慮された取り決めがあります。
「営利目的」の定義次第なのですが、上記のような必要最低限の経費回収なら、営利目的に含まないという意見や、そもそも売り上げはあっても利益がマイナスなら営利目的にあたらない、という意見も聞かれますが、最終的には権利者(いわゆる、「公式」)の解釈次第というところ。
「成仏させちゃうぞ」同梱の利用規約には、「営利目的」の範囲について、明確な定義が記載されていないため、勝手な判断はできない状況です。
これにより二次創作に携わる方が心配、または各自勝手に判断されてしまうといったことが想定されますので、公式から同人活動の実態を考慮した見解が発表されるのが理想ですね。
その他留意行為
そのまま転載は禁止
その他、様々な条項がありますが、特に確認しておきたいのが以下です。
二次創作をすることなく、当社作品の全部または一部をそのまま複製・転載等する行為
“作品利用に関する利用規約” 第8条 (当社作品・二次創作作品に関する禁止行為)より
いわゆる、公式動画や公式サイトの内容を”そのまま”コピーする「転載」は禁止ですので、気を付けましょう。
著作権表示
また、第7条の中には以下のような記載があります。
ユーザーは、二次創作作品を公表する場合には、当社が別途指定する著作権表示を付記する必要があります。
“作品利用に関する利用規約” 第7条 (著作権表示)より
著作権表示とは、一般に以下のようなもののことを言います。
© 2022 ●●●●
著作権を保有している人や、団体を示すときに使われるものです。
「©」のマーク自体は見たことがある方は多いのではないでしょうか。
こちらを二次創作作品のどこかに記載する必要があるという事ですね。
何を記載?
条項には、”当社が別途指定する”とありますが、ここでいう”当社”とは、「株式会社NIRVA」を差します。
カードゲーム「XENO」や、アパレルブランド「CARL VON LINNÉ」の販売を行っている会社ですので、中田さんと関係が非常に深い会社と思われます。
ただ、現時点で内容について別途指定されている様子はありません。(もし状況についてご存じの方がいらっしゃいましたら、コメントなどで教えて頂けると助かります。)
どこに記載?
どこに記載するか、という問題もありますが、こちらも指定されている様子はありません。
一般的なのは、本の場合は奥付、Webサイトの場合はフッター部分、Youtubeでは動画の説明欄に表記、でしょうか。
SNS等では、あまり見かけないですが、画像や写真をシェアする場合に、その画像の下の方に小さく埋め込まれている事もあります。
結局どうすればよい?
いずれにしても、正式アナウンスが無いため、勝手な判断はできない状況ではありますが、「曼陀羅東京」関連の様々な動画やイラストは既に著作権表示なしでシェアされておりますので、著作権表示が無いからと言って、取り締まりなどは行われないものと思われます(あくまで推測です)。
分からない中ではありますが、公式サイトのフッターには、「©曼陀羅東京」という表記がありますので、念のためこちらにならって、「©曼陀羅東京」を、記載可能な場所に記載しておくと良いのではないかと思われます。
まとめ
「曼陀羅東京」の二次創作について、第一弾楽曲「成仏させちゃうぞ」の素材の中にあった利用規約文を参考に、こんな利用の仕方はOK、NGという事を読み解いてみました。
私個人の解釈での読み解きですので、実際の制作・活動にあたっては、必ず公式サイトなどでの情報もご確認されたうえで行ってください。
以上です。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
※本記事の情報は記事投稿時点でのものであり、今後変更になる可能性があります。
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