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【チートスレイヤー騒動】著作権視点から問題を解説(キャラ設定に著作権はない)

2021年6月9日発売の、「月間ドラゴンエイジ7月号」に掲載された、「異世界転生者殺し-チートスレイヤー-」が炎上し、同6月28日に編集部より連載中止が発表されました。

私もKindle版を購入し読んでみたところ、元ネタとなった作品への配慮が欠けている(特に「賢者の孫」については・・・)という感情的な面だけではなく、著作権的にも問題があると思われるため、解説してみたいと思います。

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騒動の概要

騒動の概要は以下です。

「月間ドラゴンエイジ7月号」発売、「チートスレイヤー」第1話が掲載される

作中では、既存のライトノベルの登場人物に酷似した9名のキャラクターが、悪役として描かれていた。

ネットなどでこの件に関して賛否両論(否が多め)が巻き起こる(いわゆる炎上)

ドラゴンエイジ編集部より謝罪と共に8月号以降の連載中止が発表される

「チートスレイヤー」は、原作:川本ほむらさん、作画:山口アキさんの作品です。

絶対的なチート能力を持った転生者ギルド『神の反逆者』が、世界に平和をもたらすために魔王軍と戦いつつも、裏ではチート能力を利用し悪逆非道を行っている、という世界観の物語です。

そんな転生者の悪行の一環として、主人公の村が滅ぼされてしまうのですが、主人公は生き残ります。

その主人公が、突然現れた魔女と協力して転生者たちに復讐を画策していく・・・というストーリーです。

炎上してしまった最も大きな原因は、転生者ギルドのメンバーが、既存のライトノベルの主要キャラクターと容姿や設定は酷似しつつも、原作とはかけ離れた性格だったことや、主に悪役として描かれていたことだと思います。

※個人的な感想としてですが、明らかな「胸糞」として描かれているキャラクターもいましたが、9名全員がそのように描かれていたか否かは、1話時点では断定できないと思いました。

これを受けて、ドラゴンエイジ編集部からは、以下の声明にて、連載中止が発表されています。

また、この声明の同日に、元ネタとなった作品の一つと思われる「転生したらスライムだった件」の著者、伏瀬さんが、ドラゴンエイジ編集部から謝罪を受けたという事を発表されました。

編集部は、元ネタの権利者に謝罪をして回っているものと思われますが、このことがきっかけで「作者に許可を取っていないかったのか」ということが指摘され始め、火に油を注いでいる状態になっています。

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著作権の観点からの問題

炎上の原因は、元ネタとなった作品へのリスペクトが足りなかった、という事になるとは思いますが、当ブログは著作権をテーマにしておりますので、著作権の観点での問題について解説したいと思います。

キャラクターそのものに著作権はない

まず、多くの方が意外と思われるかもしれませんが、キャラクターそのものに著作権は発生しません

なぜなら、キャラクターの設定や性格、そのキャラクターが活躍する舞台である世界観の設定などは、そもそも著作物ではないからです。

「著作物」の定義は、以下のすべての条件を満たしているもののことを言います。

「著作物」の定義

①「思想又は感情」を「創作的」に「表現したもの」であること

②「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」に属するものであること

※②については文面通りの厳密性はなく、例えばプログラムのソースコードなども著作物として認められています。

例えば、以下のような「設定」「世界観」に関しては、著作物に該当しません。

フルダイブ型のMMORPGの世界に閉じ込められた主人公たちが、その世界でゲームオーバーになると現実でも命を失うというデスゲームから脱出するため、仲間と協力しながら、ゲームクリアを目指す。

主人公は、黒ずくめの装備で、固有スキルである二刀流を武器に戦う。

どこかで聞いたような設定と世界観ですが、設定や世界観については、「アイデア」であり、「表現されたもの」ではありませんから、著作物になりません

(ちなみに私が書いた上記設定例の”文章表現”については、工夫次第で著作物になりうる可能性はあります)

著作物ではない以上、著作権は発生しませんから、チートスレイヤーの「設定が酷似していた」という部分に関しては、著作権侵害ではありません。

キャラクターの絵に関しては著作権侵害

「設定」に関しては、無断流用したとしても、そもそも著作権が発生していないため、著作権侵害にならないのですが、キャラクターの容姿を表現した「絵」については、前述した著作物の定義①②を両方満たしますから、著作物にあたります。

酷似した絵を無断で雑誌に掲載したら著作権侵害にあたります

また、元ネタを知らずに、たまたま似てしまった、という場合は、著作権侵害にあたらないのですが、チートスレイヤーの場合は明らかに元ネタを知りながら、意図的に似せていますから、侵害にあたるでしょう。

どこまで特徴が似ていたらダメか、という明確なボーダーラインは議論があるところですが、個人的には、キリト⇔キルト、アインズ⇔ドーンあたりは、相当に特徴が似ているため、侵害に当たるのではないかと思います。

著作権侵害でも問題になるケースとならないケースがある

二次創作、パロディは権利者の「黙認」により成り立っている

先ほど、キャラクターの絵に関しては著作権があり、元ネタを知りながら、意図的に似せて書いている場合は著作権侵害にあたる、という事を述べました。

しかし、二次創作ものの同人誌などは、原作のキャラクターがそのままの容貌で登場していますし、商用の漫画やアニメでも、別の作品のキャラクターが登場することはあります

その中には、権利者に許可を得ていないケースも多くありますが、その殆どは大きな問題になっていません

なぜ、著作権侵害にあたる行為なのに、問題になっていないのでしょうか。

その理由としては、著作権者の不利益にならないような範囲の二次創作行為やパロディについて、著作権侵害にあたるような事であっても、権利者が「黙認」することが多いという事が挙げられます。

日本の著作権法では、著作権侵害は「親告罪」(一部例外あり)であり、著作権者が自ら侵害者を訴えてなければ、事件として成立しないのです。

権利者が侵害者を訴えず黙認している理由としては、以下のようなものが考えられます。

・漫画、アニメ、ラノベなどの分野では、二次創作やパロディが文化として根付いていて、その作品を好きでいてくれるファン活動の一環でもある。その活動をやたらに取り締まると、ファンを失うような結果を招く可能性がある。

・二次創作活動をする中で、スキルを身に着けた人材が、将来業界で活躍するという例も多いため、将来の業界のためにも厳しく取り締まるのはマイナスであると判断している。

「黙認」されないケース

だからと言ってすべてが「黙認」されるかというと、そうではありません。

非公式のグッズ販売などは、業者に頼んでプリントしてもらうだけで、公式のものと区別がつかないようなものができてしまう可能性があります。

そのようなものが大規模に出回ると権利者のビジネスを大きく阻害することになりますし、訴えたからと言ってファンを失うようなことにはなりませんから、訴えられる可能性が非常に高い分野です。

また、キャラクターのイメージを貶めるようなパロディも、権利者の不利益に繋がりますから、こちらも問題になるケースが多いでしょう。

概ね以上のようなことが言えますが、権利者によっては、そもそも二次創作やパロディに寛容でないケースもあり、ケースバイケースであると言わざるを得ない領域です。

まとめ

チートスレイヤー騒動に関して、著作権の観点から問題を解説いたしました。

キャラクターの設定ではなく、意図して容貌を似せて描いていることが、著作権侵害にあたります。

漫画などの分野では、このような侵害行為は黙認されることが多いのですが、権利者の不利益になる場合は訴えられる可能性もあります。

注:チートスレイヤーの件は、今のところ誰も訴えていないので、裁判沙汰になってはいません。

実際に問題になるかならないかは、権利者の判断になりますが、今回の場合は、著作権侵害が問題になったというよりも、SNSなどでの炎上を受けて、連載中止にという結果になったと思われます。

どちらにしても、パロディや二次創作に関しては、原作へのリスペクトが必要、という事は間違いないかと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

※記載の情報は記事投稿時点でのものであり、今後変更になる可能性があります。

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